2015年06月29日

Bunkamuraザ・ミュージアム「キャプテン・クック探検航海と『バンクス画譜集』展」

〈2015年美術展感想8展目〉
バンクス花譜集展.JPG
キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
会期:2014.12.23-2015.03.01
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されていた「キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展」に行ってきました。キャプテン・クックは幼き日から憧れ続けた人物であり,『バンクス花譜集』はそのキャプテン・クックの探検航海に同行した博物学者ジョセフ・バンクスが遺した銅版画を用いて刷られた植物画のひとつの集大成とも言うべき素晴らしい作品であります。予てから,Bunkamuraザ・ミュージアムの美術展では最後にこの『バンクス花譜集』から数点展示されていたのですが,今回はその『バンクス花譜集』そのものに焦点を当てた美術展ということで非常に楽しみにしていました。

 今回の美術展は大きく分けてふたつの部門から展示内容が構成されています。ひとつはキャプテン・クックの探検航海に纏わる文物の展示。それは例えば≪クック航海図≫や≪天球儀≫,≪パーニャ式六分儀≫といった航海道具や或いはキャプテン・クックが探検した太平洋の島嶼で信仰されていた神々の像,ブーメラン,装飾品といった民俗学的な色彩の強いものであります。もうひとつはジョセフ・バンクスの蒐集した植物を写生したシドニー・パーキンソンの原画を彫版し,印刷した『バンクス画譜集』そのものです。このふたつをソサエティ・アイランズ,ニュージーランド,オーストラリア,ジャワとキャプテン・クックの航海の軌跡に合わせて紹介するのが非常に楽しい。『バンクス花譜集』に収められた南洋の植物はいずれも非常に色彩豊かで魅力的。その緻密な筆致は素晴らしいものがあります。200年の時を超えて鮮やかに乱れ咲く色取り取りの花々にすっかり酩酊感を覚えてしまいました。同時にキャプテン・クックが探検航海の中で出逢った南洋の文化にも心惹かれるものを感じます≪ティキ≫と呼ばれる神像などはその最たるもの。≪ブーメラン≫や≪盾≫といった武具の展示も嬉しかった。しかし,やはり何といっても『バンクス花譜集』の素晴らしさが心に残ります。生来の博物画好きとしては完全に虜になってしまいました。久しぶりに図録を思わず購入しそうになってしまいました。結局は断念してしまったのですけれども。

 事前の期待を裏切らない大変に満足度の高い美術展でありました。今回の東京遠征の最大の目的にした甲斐があったというものです。学術的な価値と美術的な価値,その両方を兼ね備えた博物画はやはり自分にとっては最も好きな分野のひとつであることを再確認いたしました。今後も博物画を主体とした美術展には万難を排してでも鑑賞したいと思います。同時にジョセフ・バンクスの死後200年を経て『バンクス花譜集』の出版に漕ぎ着けた関係者の方々に深い感謝を捧げます。しかし,この原画を描いたシドニー・パーキンソンが20代だったというのが信じられません。20代半ばでの夭折はあまりにも悔やまれますが,彼の残した作品は永遠に人類の財産となることでありましょう。
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2015年06月26日

太田記念美術館「芳年と国周」

〈2015年美術展感想7展目〉
芳年と国周.JPG

芳年と国周
会場:太田記念美術館
会期:2015.02.01-02.25
観覧料:¥700
図録:未購入

 太田記念美術館で開催された「芳年と国周」を鑑賞してきました。太田記念美術館は最近の東京遠征ではすっかり定番となっています。基本的に毎月展示が変わるので,いつ行っても違った楽しみ方が出来るのが嬉しい浮世絵専門の美術館であります。場所が原宿ということで活動範囲内に程近いというのも行き易い点ですね。

 今回の展示は「芳年と国周」ということで月岡芳年と豊原国周の女性を描いた風俗画が中心となっています。中でも月岡芳年は≪風俗三十二相≫の,豊原国周は≪見立昼夜廿四時之内≫の,それぞれ一連の作品が中心となった展示となっています。風俗画を扱った浮世絵そのものにはそれ程興味がなかったのですが,此処まで徹底的に一連の風俗画を扱われると流石に面白い。特に豊原国周の≪見立昼夜廿四時之内≫は1日24時間それぞれの女性の生活を捉えるという着眼点が楽しい。浮世絵のこういった発想の柔軟さにはいつも驚かされます。月岡芳年の≪風俗三十二相≫は様々な職業の女性の姿を描いた作品です。但し,職業とは言っても当時ですので女郎や妾,芸者といった分野の女性が中心となっています。その艶やかな美しさは素晴らしい。言われなければ気づかない,細かな拘りが非常に楽しいです。このあたりを探し出すのも浮世絵鑑賞の楽しさのひとつでありましょう。

 必ずしも全面的に好みの美術展というわけではありませんでしたが,かえって新鮮な気分で楽しむことが出来ました。浮世絵鑑賞はまだまだ経験値が低いので,今後も積極的に様々な作品を鑑賞したいものであります。基本的にはやはり武者絵や妖怪絵,或いは物語や伝承に材を採った作品が一番の好みではあるのですけれどね。いずれにせよ,太田記念美術館は今後も足繁く通う美術館であることは間違いありません。毎月の展示を欠かさず見ること能わぬ身が恨めしく思えてしまいます。
posted by 森山樹 at 06:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年06月12日

国立新美術館「ルーヴル美術館展」

〈2015年美術展感想6展目〉
ルーヴル美術館展.JPG
ルーヴル美術館展 日常を描く−風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
会場:国立新美術館
会期:2015.02.21-06.01
観覧料:¥1,600
図録:未購入

 国立新美術館で開催された「ルーヴル美術館展」を鑑賞しました。自分にしては珍しく開催初日に鑑賞することになりましたが,偶然東京に滞在していたときだったので意図したものではありません。如何にも人気がありそうな美術展だったので開館と同時に入館しようと並びましたので,初日の開催直後に鑑賞しようとする熱心な美術愛好家みたくなってしまいました。おかげで,というべきか,割合に最初は混むこともなく自分の調子で鑑賞出来たのは有難かったです。人混みが酷いと鑑賞に没頭出来なくなりますからね。

 今回の「ルーヴル美術館展」の主題は風俗画ということで日常を描いた作品が約80点展示されています。目玉作品は勿論今回が初来日となるヨハネス・フェルメールの≪天文学者≫ということになるのでしょう。実際に展示もほぼ特別枠といった塩梅でありました。ルーヴル美術館に収蔵されているフェルメール作品はこれを含んで2点のみということで,日本で鑑賞出来るには非常に稀な得難い機会であったと言えます。他にもティツィアーノの≪鏡の前の女≫やバルトロメ・エステバン・ムリリョの≪物乞いの少年(蚤をとる少年)≫なども人だかりが出来ていましたが,≪天文学者≫は別格でありました。直ぐ間近で正面から鑑賞出来る時間を得たのは嬉しかった。暫くの間,見入ってしまっていました。他にもドラクロワ,ミレー,レンブラント,ルーベンスなど名立たる巨匠たちの作品が一堂に会し,心地よい疲労感さえも覚えるほどに充実した美術展でありました。個人的には大好きなユベール・ロベールの作品があったのは嬉しかった。また,寓意を含んだ風俗画としてジャン=バティスト・クルーズの≪割れた水瓶≫の美しさの背後の過ちを描いた作品なども興味深いものがありました。表面からではなく,その作品の背後にある想いを感じ取れるようになれば,より作品を楽しめるのでありましょう。このあたりは更なる研鑽を積みたいところであります。ジャン・シメオン・シャルダンの≪猿の画家≫は分かり易くて,しかも画家の衣装をまとった猿が可愛くて大好きです。

 「ルーヴル美術館展」と銘打たれた美術展には過去何度も足を運んでいますが,その中でも特に満足度の高い美術展でありました。フェルメールやティツィアーノ,ドラクロワなどの大好きな作品が多かったのも然ることながら,風俗画という題材そのものが個人的には好みなのでありましょう。特に寓意を含んだ作品の背景を考えるのが楽しい。勿論,フェルメールの≪天文学者≫を間近で鑑賞出来たという充実感も格別のものがあります。毎度のことながら,いつかはフランスのルーヴル美術館に行ってみたいものであります。帰ってくることが出来なくなってしまうかもしれませんけれども。いずれにせよ,非常に素晴らしい美術展でありました。心から満足です。
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2015年06月07日

東京国立博物館「みちのくの仏像」

〈2015年美術展感想5展目〉
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みちのくの仏像
会場:東京国立博物館
会期:2015.01.14-04.05
観覧料:¥1,000
図録:未購入

 東京国立博物館で開催されていた「みちのくの仏像」を見てきました。仏像を見るのは大変好きなのですが,造詣があるとは言えないのが悲しいところ。但し,やはり地方性というものを強く感じるときはあります。宗教としての仏教はともかくとして,文化としての仏教というのはやはり魅力的。今後も積極的に仏像を鑑賞する機会を設けたいものです。信仰心の欠片も有してはいませんが,その美に対する関心は多大にあるつもりです。

 その名の通りに東北地方の古刹名刹から集められた30弱軀の仏像が展示された美術展です。入場制限がかかりこそしなかったものの,会場内は非常に混雑していました。仏教美術の人気の高さが窺えます。しかし,ものが仏像だけにそれなりに接近しなくても鑑賞出来ることもあって,割合に自分の好きに楽しめました。東北地方は未踏の地だけに有名な仏像に関しての知識も殆どないのですが,今回の「みちのくの仏像」には国宝である福島県は勝常寺の≪薬師如来坐像および両脇侍立像≫をはじめとする素晴らしい仏像が揃っていました。素朴さの中に力強い優しさの垣間見える仏像は非常に魅力的。見慣れた奈良や京都の仏像とはまた異なった印象を抱きます。巨大な一本の木から造られた仏像の圧倒的な迫力は格別なもの。何処か神聖さよりも人間味を感じる顔立ちも特徴的でありました。今回の展示には東北の三大薬師が全て展示されていますが,中でも岩手県・黒石寺の≪薬師如来坐像≫はあの貞観地震を体験しているというのが非常に印象深い。2011年の東日本大震災と貞観地震とふたつの巨大地震はその眼には如何に映ったのか,想いを馳せてしまいます。

 仏像好きとしては素直に楽しめた美術展でありました。普段は鑑賞することが出来ない東北地方の仏像が一堂に会するというのは嬉しいです。しかしながら,本来は鑑賞するものではなく信仰の対象となるべきものの筈。であるならば,やはりこのような美術展ではなく,所蔵している寺社でこそ,鑑賞するべきなのかもしれません。いつかは東北の古刹を巡って,そこにあるがままの仏像を鑑賞してみたいものです。何はともあれ,非常に楽しめた仏像展でありました。今後も機会を逃さないようにしたいと思います。
posted by 森山樹 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年06月03日

2015年6月美術展鑑賞予定

【関東】
東洋の美@出光美術館(04.11-06.14)
ルドゥーテ「美花選」展@日比谷図書文化館(04.18-06.19)
黄金郷を彷徨う@インターメディアテク(01.24-06.21)
松園と華麗なる女性画家たち@山種美術館(04.18-06.21)
日本の妖美 橘小夢展@弥生美術館(04.03-06.28)
ユトリロとヴァラドン@東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(04.18-06.28)
フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展@東京都庭園美術館(04.25-06.30)
ヴァチカン教皇庁図書館展II@印刷博物館(04.25-07.12)
中国宮廷の女性たち 麗しき日々への想い@渋谷区立松濤美術館(06.09-07.26)
春信一番! 写楽二番!@三井記念美術館(06.20-08.16)
大地図展@東洋文庫ミュージアム(04.22-未定)
【中部・東海】
いつだって猫展@名古屋市博物館(04.25-06.07)
真昼の夢,夜の寝覚め−昼夜逆転の想像力−@三重県立美術館(05.16-06.28)
微笑みに込められた祈り 円空・木喰展@松坂屋美術館(06.13-07.12)
対極の美 白と黒がおりなす世界@徳川美術館(06.13-07.26)
マリー・ローランサン展@浜松市美術館(06.20-08.23)
ダブル・インパクト 明治ニッポンの美@名古屋ボストン美術館(06.06-08.30)
【近畿】
ギリシア考古学の父 シュリーマン@天理大学附属天理参考館(04.15-06.08)
肉筆浮世絵 美の競艶@大阪市立美術館(04.14-06.21)
古代出雲とヤマト王権@大阪府立近つ飛鳥博物館(04.25-06.28)
水にまつわる美術@大和文華館(05.15-06.28)
卑弥呼−女王創出の現象学−@大阪府立弥生文化博物館(05.01-07.05)
昔も今も,こんぴらさん。@あべのハルカス美術館(05.22-07.12)
岩に刻まれた古代美術@国立民族学博物館(05.21-07.21)
大関ヶ原展@京都文化博物館(06.02-07.26)
北大路魯山人の美 和食の天才@京都国立近代美術館(06.19-08.16)
伊藤若冲と琳派の世界@承天閣美術館(04.04-09.28)

流石に今月は東京遠征の予定はありません。
行きたい美術展も幾つかあるのですけれどね。
地方へ巡回してくれないのはやはり厳しいです。
基本的には東海地方の美術展が中心になりそう。
会期終了が迫っている「いつだって猫展」は早めに鑑賞します。
猫好きとしては見逃すことが出来ません。
「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」も楽しみですね。
浜松市美術館の「マリー・ローランサン展」は来月以降の鑑賞となる見通しです。
これも絶対に見逃したくない美術展のひとつ。
近畿地方は妙に日本古代史系の博物展が目立ちます。
「昔も今も,こんぴらさん。」は金毘羅宮の秘宝を集めた美術展。
結構楽しみにしています。
後は機会があれば,と言ったところでしょうか。
日程を上手く組み立ててなるべく見逃すことがないようにしたいものです。
posted by 森山樹 at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展鑑賞予定