2015年08月30日

国立西洋美術館「グエルチーノ展」

〈2015年美術展感想14展目〉
グエルチーノ展.JPG
グエルチーノ展

会場:国立西洋美術館
会期:2015.03.03-05.31
観覧料:¥1,500
図録:未購入

 国立西洋美術館で開催された「グエルチーノ展」に行ってきました。やや多忙だったこともあり,鑑賞出来るか微妙なところだったのですが,意を決しての日帰りでの鑑賞です。結果としては慌ただしいものの十分に可能だなということが分かったのは収穫でありました。とは言え,個人的にはやはり余裕を持って鑑賞する為には極力避けたいところではあります。危急の際には仕方がないところですけれども。

 グエルチーノはイタリア・バロック美術を代表する画家のひとり。とはいうものの,実際のところ今回の美術展の開催概要が発表されるまで,自分の知識の中にはありませんでした。事実,19世紀半ばに一度忘れ去られ,20世紀半ば以降から再評価が試みられている画家なのだそうです。その評価はともかくとして,バロック美術ということであれば,自分の趣味の範疇であり,非常に楽しむことが出来ました。今回の美術展はチェント市立絵画館の収蔵品を中心とした44点。日本初のグエルチーノ展という点においても意義のある美術展であります。イタリアのバロック美術ということでカラヴァッジョやカラッチの流れをくむ作風は素直に楽しい。題材もキリスト教の逸話を基にしたものが多かった。特に≪聖母被昇天≫の美しさはたまりません。≪聖母のもとに現れる復活したキリスト≫や≪ゴリアテの首を持つダヴィデ≫もお気に入り。≪アポロとマルシュアス≫,≪狩人ディアナ≫,≪クレオパトラ≫といったギリシア神話や西洋古代史に材を採った作品も楽しめました。また,グイド・レーニの≪ルクレティア≫も大変に好み。展示数はそれ程多くはないものの非常に濃厚な内容の美術展でありました。

 やや無理をしてでも鑑賞に踏み切ったことを後悔させない程に素晴らしい美術展でありました。此処まで満足出来る美術展というのもそう多くはありません。まだまだ自分の知らない素敵な美術が多くあるということを実感します。今後も積極的に様々な美術展を鑑賞したいものであります。なお,今回のグエルチーノ展に際して作品を多数提供したチェント市立絵画館は2012年の地震により被害を受け現在も閉館中とのこと。このグエルチーノ展も震災復興事業としての側面を有しています。この素晴らしい作品を収蔵するチェント市立絵画館の一刻も早い再建を祈って止みません。
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2015年08月16日

神奈川県立近代美術館鎌倉別館「幻想の系譜」

〈2015年美術展感想13展目〉
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幻想の系譜 ゴヤからクリンガーまで
会場:神奈川県立近代美術館鎌倉別館
会期:2015.01.24-03.22
観覧料:¥250
図録:未購入

 順番が前後しましたが,神奈川県立近代美術館鎌倉別館で開催された「幻想の系譜」に行ってきました。神奈川県立近代美術館鎌倉別館は初めて。というか,神奈川県立近代美術館そのものにも行ったことがありません。今回はたまたま鎌倉を訪れた時に開催していたということでの偶然の鑑賞という形になります。鶴岡八幡宮のすぐそばという立地が素晴らしいです。建長寺への道すがらに立ち寄ることになりました。

 「幻想の系譜」はゴヤ,ルドン,クリンガーらの版画を展示する企画展。この三人はいずれも大好きな作家たちなので非常に楽しめました。想像力の粋を凝らした奇想の美術が此処に展開されています。科学主義の発達と逆行するかのように不可視なるものへの憧憬が込められた,この幻想的な版画を愛して止みません。なお,上述の三人が中心ではありますが,他にもウィリアム・ブレイクやウジェーヌ・ドラクロワらの作品も相当数展示されています。殊にドラクロワは『ハムレット』が展示されていたのが嬉しい。ゴヤは勿論『ロス・カプリーチョス』からの作品が,ルドンは『ゴヤ頌』『幽霊屋敷』『悪の華』からの作品が展示されていました。ゴヤもルドンも各作品に付けられた題名が既に想像力を刺激します。また,ウィリアム・ブレイクは未完に終わった『神曲』からの作品が展示されていました。このあたりは幻想生物好きにはたまらない作品ばかりであります。

 幻想絵画好きにはたまらない美術展でありました。自分以外には殆ど鑑賞する人がいなかったのが寂し過ぎます。尤も,その分,じっくりと時間をかけて鑑賞することが出来ましたけれども。ロマン派から象徴主義への道筋の途中で花開いたこの種の幻想絵画はやはり自分にとっては最も愛すべき芸術分野のひとつであることを実感します。想像力が大いに刺激されるのが非常に心地良い。その全てを理解することを能わないのが残念ではありますが,今後もこの類の美術展は逃さずに鑑賞したいものであります。
posted by 森山樹 at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年08月14日

愛知県美術館「ロイヤル・アカデミー展」

〈2015年美術展感想12展目〉
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ロイヤル・アカデミー展
会場:愛知県美術館
会期:2015.02.03-04.05
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 愛知県美術館で開催の「ロイヤル・アカデミー展」に行ってきました。ロイヤル・アカデミーはまさに英国美術の殿堂ともいうべき機関であり,歴史上に名を残す芸術家が多数所属しています。英国美術は特に19世紀後半のラファエル前派から唯美主義あたりの作品は大変に好み。この分野を扱った美術展には欠かさず足を運ぶようにしています。今回の「ロイヤル・アカデミー展」も18世紀から20世紀初頭の作品が中心ということで非常に自分好みの美術展でありました。

 今回の「ロイヤル・アカデミー展」は全部で約100点が出展されています。基本的には年代別の展示なのですが,教育機関としてのロイヤル・アカデミーということで学生たちの習作の展示があるのも面白い。この中にはジャン・エヴァット・ミレイの作品も混ぜられていたりするので油断が出来ません。また,推理小説家パトリシア・コーンウェルによってあの“切り裂きジャック”の正体ではないかと名指しされたウォルター・シッカートの作品の展示があるのも世界史趣味者としては思うところがあります。勿論,芸術とはいささかも関係のない話題ではあるのですけれどね。それはともかくとして,一番嬉しかったのはジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの≪人魚≫の展示があったということ。ウォーターハウスの描く神話や伝承,文学上の女性の絵はどれも魅力的であります。いつかは≪シャロットの女≫も鑑賞したいものです。勿論,大好きなジャン・エヴァット・ミレイの≪ベラスケスの思い出≫にも見入ってしまいました。或いはジョシュア・レノルズの≪セオリー≫の美しさも格別でした。やはり古典に材を採った作品というのは自分の一番望むところであるように思います。ジョゼフ・マラド・ウィリアム・ターナーの風景画も大好きではあるのですけれども。ジョン・シンガー・サージェントがジャポニスムに影響を受けていたというのは面白かったです。

 愛して止まない19世紀末の英国美術を心行くまで堪能出来る素敵な美術展でありました。此処最近はラファエル前派を中心にこの時代の美術展が増えてきているように思えて嬉しいです。今後もこの時代の作品を鑑賞することには拘っていきたいもの。その為にも英国はもとより欧州の古典や歴史,文学にも積極的に触れていきたいと思います。いつか英国でこれらの作品を味わってみたい。改めてその想いを強くさせる美術展でありました。
posted by 森山樹 at 06:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年08月12日

東京都庭園美術館「幻想絶佳」

〈2015年美術展感想11展目〉
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幻想絶佳:アール・デコと古典主義
会場:東京都庭園美術館
会期:2015.01.17-04.07
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 東京都庭園美術館で開催の「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」を鑑賞してきました。東京都庭園美術館を訪れるのは今回が初めて。旧朝香宮邸である東京都庭園美術館は以前から行きたかった美術館のひとつ。但し,長らくの間,改修工事の為に休館しており,なかなか行く機会がありませんでした。今回の東京遠征では多少時間が余ったので,念願叶って東京都庭園美術館を訪れることが出来ました。

 旧朝香宮邸そのものがアール・デコの遺産のひとつということもあり,今回の「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」は美術館と展示物の調和が非常に美しい美術展でありました。展示内容はアール・デコ期の家具,磁器,銀器,ガラス,衣装,絵画,彫刻など多岐に渡っており,飽きさせません。自分にアール・デコに対する素養がないことが残念に思えました。ただ,漫然と鑑賞しているだけでも十分に目を楽しませてくれる美術展であったのも事実です。アール・デコの象徴ともいえる幾何学的な模様を多用した装飾などはともすれば悪趣味にも感じられますが,この旧朝香宮邸の様式には似つかわしく独特の雰囲気を醸し出していました。この空気を味わうだけでも足を運んだ甲斐があったというものであります。

 自分の好みとする分野からはやや外れる美術展ではありましたが,それでもなお楽しむことが出来たことに満足。それはやはり東京都庭園美術館という空間自体が持つ芸術性に因るのでありましょう。庭園を含めた美術館全体に対する満足度は非常に高いものがあります。絵画を中心とする自分の趣味とはやや異なるかもしれませんが,今後も折に触れて訪れてみたい美術館でありました。
posted by 森山樹 at 06:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年08月02日

2015年8月美術展鑑賞予定

【関東】
No Museum, No Life ?@東京国立近代美術館(06.16-09.13)
うらめしや〜,冥途のみやげ展@東京藝術大学大学美術館(07.22-09.13)
機動戦士ガンダム展@森アーツセンターギャラリー(07.18-09.27)
錦絵誕生250年記念 線と色の超絶技巧@太田記念美術館(08.01-09.27)
躍動と回帰 桃山の美術@出光美術館(08.08-10.12)
【中部・東海】
マリー・ローランサン展@浜松市美術館(06.20-08.23)
ダブル・インパクト 明治ニッポンの美@名古屋ボストン美術館(06.06-08.30)
魔女の秘密展@名古屋市博物館(07.18-09.27)
芸術植物園@愛知県美術館(08.07-10.04)
【近畿】
北大路魯山人の美 和食の天才@京都国立近代美術館(06.19-08.16)
天野喜孝展@兵庫県立美術館(06.27-08.30)
白鳳−花ひらく仏教美術−@奈良国立博物館(07.18-09.23)
トーベ・ヤンソン展@あべのハルカス美術館(07.25-09.27)
伊藤若冲と琳派の世界@承天閣美術館(04.04-09.28)

7月に東京遠征を行った御蔭で鑑賞したい美術展は一段落といった感じ。
今月は近場での鑑賞が中心となることでしょう。
浜松の「マリー・ローランサン展」は是が非でも鑑賞したいですけれどね。
夏の浜松市美術館は毎年自分好みの企画で嬉しいです。
何とか余暇を見つけて行ってきたいと思います。
後は奈良の「白鳳」と大阪の「トーベ・ヤンソン展」も楽しみ。
「白鳳」はなら燈花会の際に立ち寄ることになるでしょう。
「トーベ・ヤンソン展」は大阪に遠征をする意味は十分にある筈。
どちらも必ず鑑賞したいものです。
名古屋の「ダブル・インパクト」も早めに鑑賞せねばなりません。
いつの間にか会期が今月いっぱいになってしまっていました。
「魔女の秘密展」と「芸術植物園」は来月回しになってしまうかなあ。
それはそれで来月もまた苦しくなってしまうのですけれども。
或る程度は余裕を持って鑑賞計画を立案したいものです。
posted by 森山樹 at 07:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展鑑賞予定