2015年11月30日

京都文化博物館「レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展」

〈2015年美術展感想28展目〉
アンギアーリの戦い展.JPG

レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展
会場:京都文化博物館
会期:2015.08.22-11.23
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 京都文化博物館で開催された『レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展』に行ってきました。京都文化博物館は割と久々な気がします。訪れた回数はそれなりに多いのですけれどね。美術展というよりも歴史系の展示の方が多い印象かなあ。建物としても結構好みの素敵な場所であります。京都の美術館や博物館の中では一番好きかもしれません。いつ行っても人出は多いけれどね。

 今回の展示はその名の通りにレオナルド・ダ・ヴィンチの未完の大壁画計画≪アンギアーリの戦い≫を主軸としたもの。その計画の全貌は未だに明らかとなっていませんが,戦闘壁画というだけで大変魅力的。展示数そのものは決して多いわけではありませんが,日本初公開となる≪タヴォラ・ドーリア≫を始めとした作品はどれも大変に素晴らしかった。特に≪タヴォラ・ドーリア≫はその数奇な運命を含めて,心惹かれるものを感じます。また,≪アンギアーリの戦い≫と同じ間に構想されていたミケランジェロの≪カッシーナの戦い≫の板絵の模写が展示されるのも興味深い。500年の時を超えて,本来有り得たかもしれないふたりの巨匠の競演が再現されるということに限りのない浪漫を感じます。模写からだけでもその迫力が伝わってくるのが素晴らしい。このふたつの作品が完成して,現存していたら如何程までに震える作品となったか残念に思えます。しかし,逆に失われたからこそ,或る種の伝説になったこともまた事実でありましょう。激烈な戦場風景を描く戦闘画を確立する嚆矢となった作品とその周辺資料を存分に鑑賞出来たのは非常に素晴らしい経験でありました。

 作品の展示数はそれ程多くなかったですし,結構会場が混んでいたことで,あまり自分の調子で鑑賞出来なかったことは残念ですが,それでもなお十分に満足のいく美術展でありました。歴史趣味者としては周辺資料がそれなりに多かったことも楽しめました。逆に絵画だけを目当てに行くと物足りなさを感じたかもしれません。レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した幾つかの発明品のスケッチや模型の展示も楽しかった。改めてレオナルド・ダ・ヴィンチの天才性を感じさせます。失われた大作に想いを馳せての素敵な時間を堪能出来ました。大満足です。
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2015年11月29日

名古屋ボストン美術館「ヴェネツィア展」

〈2015年美術展感想27展目〉
ヴェネツィア展.JPG

ヴェネツィア展 魅惑の都市の500年
会場:名古屋ボストン美術館
会期:2015.09.19-2016.02.21
観覧料:¥1,300
図録:未購入

 名古屋ボストン美術館で開催の「ヴェネツィア展」を鑑賞してきました。ヴェネツィアは憧れの地のひとつ。水の都として,芸術の題材とされることも多い場所です。いつかは足を運んでみたいものでありますね。名古屋ボストン美術館は相変わらず自分好みの企画が多いのが嬉しいです。人出が少ないのはちょっと残念。いい美術館なのですけれどね。

 今回の「ヴェネツィア展」で面白かったのはヴェネツィアを本拠地として活躍した画家たちの作品だけではなく,ヴェネツィアを題材とした作品の展示も多かったということ。また,絵画に留まらず工芸品や写真に至るまで幅広い領域の作品が出展されていました。謂わば,様々な視点からヴェネツィアというひとつの街を俯瞰することが出来ます。こういった形での「ヴェネツィア展」は初めてだったので興味深かったです。とは言え,やはり関心は絵画や工芸に行ってしまうことは否めません。特にティツィアーノやティントレット,ヴェロネーゼの作品あたりは大変に好み。また,今回が日本初公開のロレンツォ・ロットの≪聖母子と聖ヒエロニムス,トレンティーノの聖ニコラウス≫は思わず見入ってしまう素晴らしさでした。一番はティツィアーノの≪アレクサンドリアの聖カタリナの祈り≫でしたけれども。キリスト教絵画はやはり心惹かれるものがあります。信仰を欠片も持ってはいないのですけれどね。普遍的な美しさを有しているのかもしれません。ヴェロネーゼのギリシア神話を題材とした作品も勿論好き。≪ディアナとアクタイオン≫が印象に残っています。ヴェネツィアを描いたカナレットの風景画もやはり好み。印象派ではモネの≪ヴェネツィアの大運河≫が素敵でした。ホイッスラーの≪邸館の入口≫も良かったなあ。工芸品ではヴェネツィアの華麗な装束が楽しめました。繁栄を極めた都市に相応しい華やかで艶やかなドレスが魅力的であります。

 今までに体験したことのない視点からの「ヴェネツィア展」が楽しかったです。改めてヴェネツィアという都市の魅力を強烈に感じました。印象派の題材としてのヴェネツィアは割と自分の想定外だったのですけれど,思えば此処まで印象派の作風に似つかわしい都市というのもあまりないように思います。いつかはヴェネツィアに行きたいという想いを新たにした美術展でありました。非常に楽しかったです

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2015年11月25日

名古屋市美術館「英国の夢 ラファエル前派展」

〈2015年美術展感想26展目〉
英国の夢 ラファエル前派展.JPG

英国の夢 ラファエル前派展
会場:名古屋市美術館
会期:2015.10.03-12.13
観覧料:¥1,400
図録:未購入

 名古屋市美術館で開催の「英国の夢 ラファエル前派展」に行ってきました。名古屋市美術館を訪れるのは今年二回目かな。愛知県美術館や名古屋ボストン美術館と並んで一番行き易い美術館のひとつだけに今後も自分好みの美術展を開催して欲しいものです。割と興味対象外の美術展が多いのですけれど,年に数回は至極好きな美術展を開催する印象がありますね。今回もそのひとつでありました。

 大好きなラファエル前派を扱った美術展ということで期待をしていましたが,それは裏切られることはありませんでした。展示は全部で約70点。リバプール国立美術館に収蔵された代表的な作品が日本で初めて公開される貴重な機会であります。ジョン・エヴァット・ミレイやダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ,ウィリアム・ホルマン・ハント,シメオン・ソロモン,フレデリック・レイトンらの作品を存分に堪能することが出来ます。物語性に富んだ,想像力を刺激する,美しい作品は観ていて楽しい。特に題材がアーサー王伝説やギリシア神話,シェイクスピアの作品という幼い日から馴染んできたものばかりで懐かしさも呼び起こされます。ギリシア神話は別にして,英国文化,特に19世紀の英国文化は自分に大きな影響を与えているのは自覚するところ。或る意味での自分の原点と言えるのかもしれません。そんなことを考えながら今回のラファエル前派展を鑑賞していました。特に印象に残っているのはジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの≪エコーとナルキッソス≫でありましょうか。ギリシア神話を題材とした作品はそれだけで心惹かれてしまいます。また,ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの≪シビラ・パルミフェラ≫の美しさもたまりません。赤いビロードの質感があまりにも素晴らしい。他にもジョン・エヴァット・ミレイの≪いにしえの夢−浅瀬を渡るイサンブラス卿≫やエドワード・コーリー・バーン=ジョーンズの≪フラジオレットを吹く天使≫もお気に入り。まあ,ラファエル前派から唯美主義,象徴主義に至る作品で気に入らないものは殆どないのですけれどね。

 心から堪能出来た美術展でありました。此処のところ,毎年のようにラファエル前派に関する美術展が開催されているのは嬉しいです。何も考えずにその美しさだけを愛でることが出来るのは素晴らしい。いつかは英国本国でラファエル前派に関する美術館を巡りたいものであります。その為にもラファエル前派が題材とする英国文化の原点となるアーサー王伝説やシェイクスピア,或いは聖書やギリシア・ローマ神話,その他の伝承などをもっと理解しなければいけません。素養を更に高めるべく勉強していきたいと思います。
posted by 森山樹 at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年11月15日

あべのハルカス美術館「トーベ・ヤンソン展」

〈2015年美術展感想25展目〉
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トーベ・ヤンソン展〜ムーミンと生きる〜
会場:あべのハルカス美術館
会期:2015.07.25-09.27
観覧料:¥1,200
図録:未購入

 あべのハルカス美術館で開催の「トーベ・ヤンソン展」に行ってきました。あべのハルカス美術館はこれが2回目になるのかな。その名の通りにあべのハルカス内にある美術館です。まだ開館して数年も経たないということで施設が美しいのが大変魅力的。館内も割合に広く余裕をもって鑑賞出来るのが嬉しいです。地上16階ということで眺望も素晴らしいですしね。今後も行く機会の増えそうな美術館であります。割合に巡回展が多いので情報収集を怠れません。

 今回は「トーベ・ヤンソン展」ということで,ムーミンだけに留まらない展示というのが楽しい。思えば,トーベ・ヤンソンに出逢ってから長い歳月を経ているというのに,〈ムーミン〉以外の画業というものには然して触れてこなかった気がします。その意味では非常に意義深い美術展でありました。何と言っても,トーベ・ヤンソンが手掛けたJ.R.R.トールキンの『ホビットの冒険』やルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の挿絵を堪能出来たのが満足。如何にもトーベ・ヤンソンの画風でありながら,きちんと『ホビットの冒険』や『不思議の国のアリス』の雰囲気を醸し出しているのですよね。この挿絵の邦訳が出たら思わず購入してしまいそう。実際に刊行されているかもしれませんけれども。また,画家としてのトーベ・ヤンソンが手掛けた作品は意外なくらいに力強い筆致であり,〈ムーミン〉とは異なる印象を受けます。とは言え,やはりその根底に流れる空気感には共通するものを感じるのも事実。このあたりは面白いです。そして何と言っても,今回の美術展でも大半を占めるのが〈ムーミン〉に関するもの。やはりこの魅力は格別であります。挿絵や漫画など圧倒的な量の展示物に時間が過ぎるのを忘れる程。習作なども多数展示されているのが興味深い。ムーミントロールやスナフキン,スノークのお嬢さん,ミィといった有名な登場人物だけでなく,フィリフヨンカ夫人やニンニ,おしゃまさんらの原画もきちんと展示されています。大好きな飛行鬼の展示が少なかったのは残念ですけれども。改めて,〈ムーミン〉はトーベ・ヤンソンの原画が一番魅力的だなあというのを実感します。これまでも,これからも,自分の中で特別な位置を占める方であることは間違いありません。

 トーベ・ヤンソン好きとしては心底楽しめる美術展でありました。展示数も細かいものを含めて約400点という膨大な量で完全に酔ってしまいました。時間さえ余裕があれば,幾らでも鑑賞していたかった美術展であります。また,トーベ・ヤンソンの夏の家が再現されているのも面白い試みでありました。〈ムーミン〉に関する模型も幾つか展示されていたのも楽しい。〈ムーミン〉に関する美術展は初めてではありませんが,此処まで充実した美術展は覚えがありません。心からトーベ・ヤンソンという魅力的な芸術家の作品を堪能出来る素敵な美術展でありました。大満足です。
posted by 森山樹 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想

2015年11月09日

愛知県美術館「芸術植物園」

〈2015年美術展感想24展目〉
芸術植物園.JPG

芸術植物園
会場:愛知県美術館
会期:2015.08.07-10.04
観覧料:¥1,100
図録:未購入

 愛知県美術館で開催の「芸術植物園」を鑑賞してきました。植物という題材を扱った様々な分野の展示があるのが面白い。博物画程度しか期待はしていなかったのですが,存外に楽しかったです。とは言え,特に現代芸術になると前衛的過ぎて全く理解出来ない作品が含まれているのも事実。それでも或る種の思考実験として考察するのも楽しいものでありました。

 植物に関する芸術を様々な視点から扱った美術展です。というわけで,分野は多岐に渡り,散漫な印象もありますが,植物に絡んでいるという一貫性は面白い。展示数は約130点と相当数ありますが,その全てに興味を惹かれるというわけではないので,割と少なく感じてしまいます。それでも,十分に見応えはあるのですけれども。個人的にはやはり博物画に類する作品が一番面白かった。古代の植物文様から江戸時代の花鳥画,本草学図譜,そして近代の植物写真と,人類の発展とともに植物の描かれ方が変化しているのが興味深い。徐々に科学的な視点が強くなってきているのを感じます。これが現代芸術になると植物を如何に表現するかに移行しているというのが楽しい。理解は出来なくても楽しいというのは重要なことかもしれません。楽しくない芸術にそれ程の価値を認めることはありませんから。その意味では特に芸術に興味のない方が素直に楽しめる美術展かなと思いました。勿論,相当の博物画を鑑賞出来たので,その意味からも満足は出来ましたけれども。

 現代芸術が結構な割合を占めていたので本来は好みからは外れるのですが,それでも結構楽しめた美術展でありました。やはり博物画或いは静物画好きとしては植物という題材そのものに心惹かれるものを感じてしまいます。現代芸術に対しては理解出来ないという拒否感が先ず働いてしまうのを何とかしたいもの。その意味では割合に今回の美術展が楽しめたことは次に繋がるのかもしれません。その契機ともなるかもしれない意味では得難い美術展でありました。
posted by 森山樹 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展感想